光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「好きなように弾いたら、何だか滅茶苦茶になっちゃう気がするの」
ただ感情を託すだけなら、それでも良かった。
滅茶苦茶に荒れたメロディーも、あたしの感情を十分表してくれたから。
でも今作らないといけないのは、受験のためのもの。
音楽に精通している人達に聞かせるメロディーが、あたしの好き勝手で作ったもので良いはずがない。
そのことを分かっているから、余計に悩んでしまうんだ。
「……確かにね。滅茶苦茶になってしまうのは良くない」
「……」
「だけど作曲って、好きなように弾くものじゃない?
今の佐奈は、リズムを計算しすぎてる。全然、楽しそうじゃないわよ?」
そう言われて、ハッとした。
……あたし、楽しそうじゃない?
あまりも悩んでいるうちに、あたしはピアノを弾く楽しさから離れてしまっていたのかもしれない。
思い返せば最近、難しい顔ばかりをしてピアノを弾いていた。
今まで作曲するときは、全然そんなことなかったのに。