光を背負う、僕ら。―第2楽章―



鍵盤を見つめていると、諭すようなお母さんの声が耳に届く。




「作曲するって言うのはね、自分の中でしか生まれないメロディーを形にすることよ。
だから誰かの曲の形を参考にして作ったら、きっとそれは佐奈の曲とは違う。
言ってる意味、分かる?」




あたしは鍵盤から顔を上げて、お母さんの顔を見て頷いた。



「コツなんてない」と言われた意味も、分かったような気がする。




「最初は滅茶苦茶になっても、それで良いの。
とにかく佐奈が好きなように、感じたことや考えていることをメロディーにしてみなさい。
リズムや強弱を修正するのは、それからでも遅くないから」




お母さんはそう言うと、「夕飯の用意をするね」とリビングから出ていった。



頭の中で、何度もお母さんの言葉がリピートされる。



あたしはしばらく、ピアノの前で呆然としていた。





◇◆◇◆◇




結局作曲は完成しないまま、その日のレッスンは終わった。



夕飯とお風呂もさっさと済ませたあたしは自室に戻り、勉強机に座って頬杖をついていた。



机の上に広がるのは、やっぱり真っ白な楽譜で。


今もなお、お母さんの言葉が頭にこだまする。



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