光を背負う、僕ら。―第2楽章―



『佐奈が好きなように、感じたことや考えていることをメロディーにしてみなさい』




あたしが今、好きなこと。
あたしが今、感じたこと。
あたしが今、考えていること。



静かに瞼を閉じた。

すると真っ暗闇の中に、ポツポツと小さな光が灯り出す。



ピアノ。

お母さんに認めてもらえたピアニストへの夢。

伸一への告白。
真藤君からの告白。

悩んだ末に辿り着いた決断。

みんなが目指すそれぞれの夢。

近付く卒業のとき。



現れた光の正体はすべて、あたしの心を支配しているものだった。



……そしてあたしが今一番、メロディーに変えたいものたち。




「……決めた」




まだ、上手くいくかは分からないけれど。


ありのままの気持ちで、伝えたい感情を好きなように表した曲を作ろう。



失敗したときのことなんて、またその時に考えればいいのだから。




あたしは3冊のノートをぎゅっと胸に抱き締めたあと、以前と同じようにハミングで作曲を始めた。



すると気分が晴れて、自分でも楽しんでいることがよく分かった。



それに作り出す曲も、何かしっくりくる。



あたしは忘れないように楽譜にメロディーを書きつつ、作曲を続けた。



静かな夜に思い浮かぶ曲は、優しいものになるような気がした。



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