光を背負う、僕ら。―第2楽章―
鈴木先生が校長先生に貰った許可には、いくつかの条件がついていた。
使用してよいのは、旧音楽室にあるピアノであること。
練習出来るのは、放課後のみであること。
練習時間は、学校の勉強の妨げにならない程度にすること。
最終下校時刻は厳守すること。
校長先生はそれらの条件さえ守ればいくらでもピアノを貸すと、約束してくれた。
これ以上に有り難くて恵まれていることなんて、きっとないんじゃないかな。
……そうして今、あたしはここにいる。
先生のあとに続いて、躊躇いがちにピアノに近付いた。
先生はカバーに降り積もった埃を床へ払うと、カバーを外してピアノをあたしに見せてくれた。
「古いって言うわりには、そんなに見た目は古くないですね」
「本当ね。佐奈ちゃんの言う通りだわ。私も今初めて見たけど、まだまだ使えそうな感じね」
先生は外したカバーを近くにあった机に置いて、あたしと向き合う。
「じゃあ、ここから先は佐奈ちゃんに任せます。後片付けと部屋の戸締まり、あと下校時刻はきちんと守ってね」
「あっ、はい!」
てっきり試しにピアノを弾いてみるまでは先生もここにいると思っていたから、先生の早急な行動には拍子抜けした。