光を背負う、僕ら。―第2楽章―



お母さんの言う通りだ。


弾いていて、とても楽しかった。



自分が好きなようにピアノを弾く楽しさを、久しぶりに思い出したような気がする。



きっとこうやって思えるものが、あたしにしか作れない曲なんだね。



自制が効かなくて、嬉しさから口元が緩んでしまう。




「あらあら、にやにやしちゃって」


「だってー…。やっと曲が出来て嬉しいんだもん」


「喜ぶのはまだ早いわよ」


「あ…」




あたしの手から、するりと楽譜を奪われる。




「確かに良くなったとは言ったけど、まだまだ荒い部分があるわ。そこは直さないと、まだまだ完成とは言えないわよ?」


「……はーい…」


「あと、油断は禁物。
この曲って、受験のときに弾くんでしょう?だったらまだまだ演奏も極めないとね。演奏だって、まだまだ未熟なんだから」


「はい……」




さすがは元ピアニストだ。


こういうことを言うときは抜かりがない。



……でも。

お母さんになら、何を言われたって全然嫌じゃない。



ピアニストへの夢を反対されていたときは、むしろこういう瞬間をずっと待ちわびていたぐらいだ。



ピアニストを辞めてしまったとは言え、こうやってプロの目で見てもらえることはすごく幸せなんだ。



< 281 / 485 >

この作品をシェア

pagetop