光を背負う、僕ら。―第2楽章―
お母さんの言う通りだ。
弾いていて、とても楽しかった。
自分が好きなようにピアノを弾く楽しさを、久しぶりに思い出したような気がする。
きっとこうやって思えるものが、あたしにしか作れない曲なんだね。
自制が効かなくて、嬉しさから口元が緩んでしまう。
「あらあら、にやにやしちゃって」
「だってー…。やっと曲が出来て嬉しいんだもん」
「喜ぶのはまだ早いわよ」
「あ…」
あたしの手から、するりと楽譜を奪われる。
「確かに良くなったとは言ったけど、まだまだ荒い部分があるわ。そこは直さないと、まだまだ完成とは言えないわよ?」
「……はーい…」
「あと、油断は禁物。
この曲って、受験のときに弾くんでしょう?だったらまだまだ演奏も極めないとね。演奏だって、まだまだ未熟なんだから」
「はい……」
さすがは元ピアニストだ。
こういうことを言うときは抜かりがない。
……でも。
お母さんになら、何を言われたって全然嫌じゃない。
ピアニストへの夢を反対されていたときは、むしろこういう瞬間をずっと待ちわびていたぐらいだ。
ピアニストを辞めてしまったとは言え、こうやってプロの目で見てもらえることはすごく幸せなんだ。