光を背負う、僕ら。―第2楽章―




◇◆◇◆◇




近所のスーパーにケチャップを買いに行った帰り道。



ニットのカーディガンを羽織っていたけれど、少し肌寒く感じた。



まだ日は暮れていないけれど、気温はすでに下がり始めているのかもしれない。



秋も終わりそうだな……。



街路樹の葉が落ちて道路の脇に溜まっている様子を見ながら、そんなことを思った。



ケチャップだけが入った小さなエコバッグを軽く揺らしながら、遠くに見える山と空を眺める。



徐々に空がオレンジ色に染まり、山も燃えているみたいに赤く照らされていた。



……オレンジの空を見ると、何故か切なくなった。



脳裏には、オレンジ色に染まった音楽室が浮かんでくる。



伸一と一緒に過ごした、秘密の放課後……。



忘れかけていた記憶が目の前に現れそうになって、慌てて足を止めて目を塞いだ。



……変なの。

この時間帯に真藤君と下校しても、伸一のことなんてちっとも思い出さなかったのに。



一人になると、悲しいぐらいに伸一の存在があたしの中で強くなる。



< 283 / 485 >

この作品をシェア

pagetop