光を背負う、僕ら。―第2楽章―
……あたしはなんだか、納得出来ていない。
小さな疑問が胸に引っ掛かってモヤモヤする。
どうして再び、あの部屋に足を運んだの?
メモを置いていった日以降、全然姿を現さなかった。
それなのにどうして、時間が経った数日後にわざわざ行ったの……?
意図が掴めない行動が、不思議で仕方なかった。
……でも、聞くことなんか出来ない。
そこまであたしが立ち入ってしまうのはいけないと思った。
「よっ…と!」
伸一は動かし続けていたボールを少しだけ高く跳ね上げて、ちょうど落ちてきたところで手でキャッチした。
それを合図に、あたしは立ち上がる。
「……あたし、そろそろ帰るね」
これ以上はもう、一緒にいてはいけない。
長く一緒にいればいるほど、別れがつらくなる。
忘れるって、離れるって決めたんだ。
だからもう、二人きりの時間は終わらそう……。
「ココア、ごちそうさま。じゃあね……」
明日学校に行けば、また教室で顔を合わせるだろう。
だけどきっと視線は交わらないし、言葉を交わすなんてこときっとない。
そう思うとこの別れが特別なものに思えて、無性に泣きたくなった。