光を背負う、僕ら。―第2楽章―



「……どうして、そんなこと聞くの?」




問いかけへの返事よりも先に、思っていたことが口をついて出ていた。



言った本人であるあたしも驚いたけど、伸一も相当驚いているみたいだった。



日がさっきよりもさらに沈んで見えた伸一の視線は宙を泳いでいて、完全に戸惑っている。



当たり前だよね。

質問に質問で返されたのだから。



……だけど、伸一が知りたいと思ったように、あたしだって知りたいよ。



あくまでも噂でしか聞いたことのないことを、確かめたいと思う理由を。




「えっと、その、結構噂になってるから、気になったっていうか……」




伸一は言葉を何度も詰まらせながらそう言った。



だけどその返事からは、伸一の真意までは分からない。



だって『気になった』っていう決定的な根拠がなければ、ただ噂になったとしても気にしないでしょう?



たとえば、自分に向いていた好意が別の人に移って気にくわないとか。


たとえば、フッた女の成れの果てが面白いとか。



そういう何かしらの理由がなければ、物事に興味は湧かないでしょう……?



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