光を背負う、僕ら。―第2楽章―
空き缶とエコバッグが指先から滑り落ちた。地面に着地して、鈍い音が立つ。
「さ、とうくん……?」
涙が瞳の表面から流れ落ちて、最後の日が沈む瞬間が佐藤君の肩越しにはっきりと見えた。
あたし、佐藤君に抱き締められてる……?
そのことを認識出来たのは、午後5時のチャイムが空に響き渡ったときだった。
公園内にあるスピーカーから流れる電子メロディーに促されるように、子供たちがぞろぞろと帰り支度を始めている。
だけどあたしは何故か伸一に抱き締められたまま、そんな公園の一角で固まっていた。
な、なんで?
なんであたし、抱き締められてるの……?
どういう流れでこうなっているのか全然考えられなくて、戸惑いだけが募っていく。
「……ごめん」
「佐藤君……?」
「麻木、ごめんな……」
背中に回されている腕に力を込められた気がして、切なく胸が鳴った。
うわごとのように掠れた声で何度も発せられる伸一の「ごめん」の言葉が、余計に胸を締め付ける。
密着してドキドキしているはずなのに、それ以上にこの光景が悲しく感じられて、また涙が出そうになった。
伸一を跳ね返すことも、抱き締め返すことも出来ない。
行き場がないあたしの腕は、冷えた空気に包まれていた。