光を背負う、僕ら。―第2楽章―



「…よしっ!」



先生が荷物の間の狭い通路を抜けて部屋を出ていくのを見送って、あたしはさっそく準備に取りかかる。



ピアノはさっき、先生が準備を済ましていってくれた。



あとはカバンの中から、練習に必要なものを出すだけ。



指ならしのために弾く曲の楽譜。


東條学園の入試の過去問題集。


あとは作曲のヒントになりそうな音楽の本をいろいろ。



ピアノの近くにあった机の埃を払って、とにかく使いそうなものだけをそこに置く。



そしてあたしはピアノの前の椅子に座って、改めてピアノと向き合った。



「……」



先程まで被っていたカバーと同じ、漆黒のピアノ。



輝きが鈍ってどこか年代を感じさせる。



けれど外見がいかにも壊れているわけではなくて、むしろ大切に使われてきたんだと思える。



あたしはゆっくりと鍵盤の蓋を開いて、さらに準備を整えた。



……緊張してる。



膝の上に置いた手は、微かに震えていて止まらない。



鼓動の音が徐々に大きくなって身体を侵食していくのを感じながら、瞼と両手を強く閉じた。



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