光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「……ごめん」
もう何度目か分からない同じ言葉を聞いたとき、伸一があたしの肩に手を置いてゆっくりと離れた。
至近距離で目が合う。
初めての距離で見る伸一の表情は、何故か泣いているようにも見える複雑なものだった。
「……どうしたの?」
そう尋ねてみるけれど、返事は返ってこない。
代わりに肩に置かれていた手が、あるべき位置に戻っていく。
違和感だけを残して。
伸一は落ちていたものを拾うと、エコバッグだけあたしに持たせた。
「……悪かったな、引き止めて。また、明日な」
伸一はほとんど放心情態のあたしに早口でそう言うと、自分の荷物を手にして歩き出してしまった。
拾ってくれた空き缶も、一緒に持っていっている。
――聞きたいことは、たくさんあった。
何に対しての『ごめん』なの?
どうして抱き締めたの?
あんな表情をしていた理由は何なの?
……でも、聞けなかった。
聞くことが怖く思えて、引き止めることさえ出来ない。
あたしは結局、謎を消化出来ないまま、去り行く伸一の背中を見つめていた。
さっきまで触れていた温もりが今はもう冷たくて、寂しかった。
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