光を背負う、僕ら。―第2楽章―



久しぶりに音を奏でるピアノ。


一体、どんな音を奏でるのだろう…。



ピアノを自由に弾けるという高揚と初めて使うピアノへの緊張が入り混ざって、胸が苦しくなる。



あたしは少し震えが治まった指で、鍵盤を軽く押した。




――♪~……




ポーンと、音は部屋の中で跳ね返って響く。



鍵盤が指を押し返す感触も、耳に響いて残る音のなめらかさも。




……すべてが、心地よい。




「ははっ…」



自然と笑いが溢れる。



自分だけの空間でこんなにも自由に弾けるのは、一体いつぶりだろ。



ずっと、この瞬間を待ちわびていたのかもしれない。



このピアノがもう一度弾かれることを、ここで静かに待っていたように…。





あたしは興奮冷めやらぬうちに指ならしの曲を弾いて、昔の感覚を呼び覚ますとともに研ぎ澄ましていった。



幼い頃に弾いていた曲の楽譜も家の中を探しまくって持ってきていたから、それもさっそく弾いてみた。



……だけど。


練習する場所が得られたといっても、苦しいのはここからだったんだ。



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