光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「……うん、好きだよ。誰よりも、伸一のことを想ってる」
小春ちゃんの前で、初めて“伸一”と呼び捨てした。
伸一と話す機会が減ってからは、ずっと封印してきた呼び名。
もう心の中でしか呼べないと思っていた、好きな人の名前。
それが思わず出るほど、あたしは伸一が好きなんだ。
よくこんなにも堂々と小春ちゃんの前でこんなことを言えたなと、一瞬自分の言動に驚いてしまう。
でも気持ちに嘘はないと、胸を張って言える。
もう諦めないって、想い続けるって決めたのは本当のことだから。
どうやらそんなあたしの返事に小春ちゃんは満足したらしく、「そっかー!」と笑ってくれた。
今度は夏空みたいに清々しい笑顔だったから、ちょっとだけ眩しい。
「うん、良かった。佐奈ちゃんがそう言ってくれるならあたしも嬉しいよ。……頑張ってね。今度はあたしが、二人のこと応援してるよ」
「……うん、ありがとう」
伸一の元カノという立場の人に応援されるのは、なんだか変な感覚がする。
でも素直にお礼を言えば笑ってくれる小春ちゃんは、本当に芯が強い人なんだと思えた。
◇◆◇◆◇
すべての話を終えて小春ちゃんの家を出たのは、午後6時を回った頃だった。
玄関先で見送られたあと、すっかり暗くなって街灯に照らされている道を歩く。
しばらくとぼとぼと歩いて息を吐き出したところで、やっと肩の荷が下りたような気がした。
一度に色々とたくさんの話を聞いたせいか、頭が完全に疲れてしまっているみたい。
想いと事実があたしの中で交差する。