光を背負う、僕ら。―第2楽章―
友達が困っている、苦しんでいる。
だから、手を差し伸べよう。
それはあたしも思ったことがあるし、そういう救いの手は何度も明日美と流歌から差し出してもらってきた。
だからやり方はどうであれ、その気持ちが迷惑や悪いことだなんて言葉で片付けるのは良くない気がするよ。
そのことを小春ちゃんに伝えて「みんなをあまり責めないでね。小春ちゃんのことを大切に思ってした行動だと思うから」と言うと、嬉しそうに頷いていた。
脳裏に大切な友達の顔が浮かんだあたしの表情も、きっとそっくりになっていたと思う。
人の気持ちに親身になって寄り添ってくれる友達がいるところ。
ピアノのこと。
好きな人のこと。
思えばなんだか、あたし達は同じところが多かったね。
こんなにも同じ部分を持ったあたし達だから、これからはきっと良い関係を築けるような気がする。
そんな未来を、夢見ても良いよね。
夜空を見上げると、真ん丸な月が空に昇っていた。
一つのわだかまりが取れたおかげか、それとも秋の澄んだ空気のおかげか。
欠けていない白っぽい月がとても綺麗に見えた。
……伸一も、この月を見てるのかな。
果たして日本全国のどれだけの人が今日の月を見ているのか分からないけれど、見ている人の中に伸一も含まれていると良いなと。
しょうもないことを本気で願えるから不思議だ。
……でも、まだすべてが終わったわけじゃない。
あたしはまだおとといの伸一の『ごめん』の意味も、伸一の気持ちも聞けていない。
それに自分の気持ちだって、もう一度ちゃんと伝えたい。
肩にかけているスクールバッグの取っ手をぎゅっと握り締めた。
力の籠った右手が熱い。
明日、ちゃんと伸一と話そう。
今日小春ちゃんと話したみたいにきちんと向き合えば、伸一の気持ちも分かるよね。
明日のことを思うと、今から緊張してしまう。
でも帰路につく足取りは、ちゃんと明日に向かって力強く前へ進んでいた。
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