光を背負う、僕ら。―第2楽章―
多くの人に囲まれる伸一が、今一番に想っているのは誰なの……?
そう聞きたいのに、本当は勇気が出なくて聞くことを躊躇ってる。
あたし、いつも伸一の気持ちが分からないの。
小春ちゃんと付き合って両思いだと思っていたのに、実はそれも少し違ったりしていて。
本当は誰を想っているのかなんて、今でも分からないから不安しかない。
小春ちゃんや真藤君は、まるで伸一があたしを好きみたいなこと言っていたけれど……。
いまいち実感がないし、正直信じきれていない。
やっぱり、本人に聞かないとダメみたいだ。
でもその本人には、声を掛けることさえまだ出来ていない。
……なんて、堂々巡りな考えを。
あたしは今日だけで、何度一人で繰り返して悩んだだろう。
自席に座って頬杖をついた状態で、ふぅと息を吐いた。
もうため息をつくことさえ疲れてしまったみたい。
こういうときにいつも話を聞いてくれる二人は、用事があるとかで揃って職員室に行ってしまっている。
だからお留守番のあたしは暇を持て余すばかりで、次の数学の授業のために出しておいた教科書を左手でページを落とすように捲って目を通した。
見えているのか見えていないのか定まらないスピードで、擦り切れた紙が上から下へ流れていく。
「苦労してるみたいだね」
パタンと残りのページが落ちて、不思議な立体物が載っている表紙が目に留まる。
その瞬間に声を掛けられた。
顔を上げると、小春ちゃんが目の前に立って閉じられた教科書を見ていた。
何に、なんて野暮なことを聞くことも出来ずにいると、小春ちゃんは前の空席の椅子に座ってこっちに振り向く。
「まぁ、あれだけ囲まれてたら無理もないよね」
二人の視線が揃って輪の真ん中に向く。
隙間から見える中心人物の笑顔を、たぶん似てるけど少し違う思いを抱えて、それぞれ見ていた。