光を背負う、僕ら。―第2楽章―
しばらくの間、二人で甘酒を飲みながら他愛ない話を続けていた。
その間、片手は繋いでベンチの上に置いたままだった。
「雪、すっかり溶けてきたみたいだな」
「ほんとだね。もうほとんどない」
境内を見渡しながら伸一が言ったように、少しだけ積もっていた雪はもうほとんど姿を消していた。
残っているとしたら、木陰の根元で誰にも踏まれずにあるやつぐらいだ。
でももともとそんなに深く積もっていない雪だから、今日が終わる頃には木陰の雪もきっと姿を消すだろう。
「雪が溶けるの見るとさ、なんか春って感じだよな」
「そう……かな?」
いくら日差しが当たっていて暖かいとはいえ、まだまだ寒い日が続いているから正直そう思えない。
ついつい苦笑すると、伸一も同じように笑ってから空を見上げた。
「いつもはさ、雪解けを見るともうすぐ春だなーって嬉しくなるんだ。だけどなんか、今年は嬉しくねぇなぁ」
「……どうして?」
「だってさ、春が来たら……卒業じゃん」
繋いでいた手に力が込められた気がした。
前を向いたままの真剣な表情に、胸がドキリと嫌な音を立てる。
寒さではない何かに鳥肌が立っていく。
……そうか、春が来たら卒業なんだ。
雪が姿を消して、新たな命が芽生える頃にはもう、別れの時を迎えているなんて……。
実感がないし、まだその時が来るなんて信じられない。
信じたくさえないのかもしれない。