光を背負う、僕ら。―第2楽章―



しばらくの間、二人で甘酒を飲みながら他愛ない話を続けていた。



その間、片手は繋いでベンチの上に置いたままだった。




「雪、すっかり溶けてきたみたいだな」


「ほんとだね。もうほとんどない」




境内を見渡しながら伸一が言ったように、少しだけ積もっていた雪はもうほとんど姿を消していた。



残っているとしたら、木陰の根元で誰にも踏まれずにあるやつぐらいだ。



でももともとそんなに深く積もっていない雪だから、今日が終わる頃には木陰の雪もきっと姿を消すだろう。




「雪が溶けるの見るとさ、なんか春って感じだよな」


「そう……かな?」




いくら日差しが当たっていて暖かいとはいえ、まだまだ寒い日が続いているから正直そう思えない。



ついつい苦笑すると、伸一も同じように笑ってから空を見上げた。




「いつもはさ、雪解けを見るともうすぐ春だなーって嬉しくなるんだ。だけどなんか、今年は嬉しくねぇなぁ」


「……どうして?」


「だってさ、春が来たら……卒業じゃん」




繋いでいた手に力が込められた気がした。



前を向いたままの真剣な表情に、胸がドキリと嫌な音を立てる。



寒さではない何かに鳥肌が立っていく。




……そうか、春が来たら卒業なんだ。



雪が姿を消して、新たな命が芽生える頃にはもう、別れの時を迎えているなんて……。



実感がないし、まだその時が来るなんて信じられない。

信じたくさえないのかもしれない。



< 410 / 485 >

この作品をシェア

pagetop