光を背負う、僕ら。―第2楽章―
音楽は心の表れ
――後悔なんかはしていない。
だってピアニストを目指すと決めたことも、ピアノが大好きだという気持ちも真実だから。
だから今はただ、自分でこの道に進むと決めたことが、あの日に苦しんで出した選択の答えが、正しかったものだと信じたいんだ……。
1月最後の土曜日。
ついに東條学園の入試当日になった。
まだまだ先だと思っていたし、この日を迎えるまで本当に長かったと思う。
でも、今日なんだ。
今日あたしの力をすべて出し切ったら、結果はどうであれ終わるんだよね……。
東條学園の最寄りの駅で電車を降りて、小さなホームの屋根の外に広がる空を見上げた。
天気は幸い恵まれていて、青い空にほとんど白い雲の姿が見当たらない明るい空だった。
でも気温は朝からぐっと冷えていて、どうしても指がかじかんでしまう。
ピアノの実技試験があるから出来るだけ指を温めておかないといけないと思って、今日はここに来るまでずっと手袋をしていた。
だけど改札を抜けた先にある小さな待合室に入ったところで隅っこに寄り、ピンク色の手袋を外した。
そして制服の胸元にある内ポケットから、手袋と同じ色のお守りを取り出す。
伸一とお揃いで、夢が叶うことを一緒に願ったお守り。
それを緊張と寒さで震える手で柔らかく包み込み、ぎゅっと瞼を閉じた。
東條学園に着いてからはもうこのお守りを取り出している時間もなさそうだから、今のうちにパワーを貰っておく。