光を背負う、僕ら。―第2楽章―



同室で待機している周りの受験生達も、各々楽譜を見たりしながら神経を研ぎ澄ましていた。



ここに集まっている人の数だけ、自作の音楽が生まれている。


そのことを実感すると、結構すごいことだと思えた。



だって“その人”でなければ作れない音楽があって、そしてそれが今日の運命を分けるなんて……。



結果はどうであれ、この日のために作った曲が無駄にならなければいいな。

いっぱい悩んで作った曲だもんね。



そうならないためにも、あたしは精一杯この曲を弾こう。



強くそう誓って、楽譜をしっかりと見つめていた。





「受験番号630番さん、こちらに来てください」




控え室に戻って1時間ぐらい経った頃、担当の人が部屋に来てあたしの受験番号を呼んだ。



ドクン……と一際大きく動いた心臓が、口から飛び出てしまいそうだ。



でも、ぐずぐずなんてしていられない。



すでに纏めておいた荷物を持ち、素早く担当の人のもとへ歩み寄る。



部屋に案内してくれる担当の人は、さっきの実技試験のときとは違う人だった。



さらにあとに着いていくと目的地もさっきとは違い、随分と長く校舎の中を歩いた。



なかなか試験部屋に辿り着かなくて、その間に緊張が高まっていく。



だけど歩いていくうちに見覚えのある景色が続いていることに気付いてハッとした。



夏にここを訪れた体験入学の記憶が呼び起こされる。



そうだ、確かここは歩いたことがある。



そしてこの先にあり、ピアノがあった部屋と言えば……。



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