光を背負う、僕ら。―第2楽章―
目的地に確信がついたとき、辿り着いたのは少し大きめな部屋の前だった。
廊下の窓を背にして、椅子がポツンと部屋の扉に向かって佇んでいる。
「前の方が部屋から出たら入室してください。それまではどうぞ、座って待っていて下さい」
「はい、ありがとうございます」
案内をしてくれた人に会釈をすると、その人は控え室の方に帰っていった。
遠ざかる背中が廊下の角を曲がっていくのを確認して、それから椅子に腰掛ける。
部屋の前で待機するというここまでの流れはさっきの実技試験と同じ。
でも部屋が違うこととこの場が極めて無音なことが、集中力を削いでいく気がした。
……やっぱり、この部屋だったんだ。
目の前にある部屋の扉を見て、確信が当たっていたことを知る。
この部屋は、体験入学のときに入ったことがあった。
……あたしがピアノを弾いたあの部屋だ。
そして、学園長やみんなにあたしの母親のことが知られてしまった場所。
あのとき学園長にピアノの演奏を聞かれていなくて、ピアニストの娘だとばれていなかったら……。
もしかすると、ここにもう一度来る覚悟は出来ていなかったかもしれない。
学園長からお母さんの話を聞けたことは、この学園を目指す意志を再確認させてくれたから……。
物音一つさえしない廊下にいると、集中しなければいけないはずなのに余計なことばかり考えてしまうからダメだ。
うるさくても集中出来ないけれど、静かすぎるのも逆に気が散ってしまうみたい。