光を背負う、僕ら。―第2楽章―
どうやらこの部屋はさっきの試験部屋とは違い、防音設備がきちんと整っているようだった。
その証拠に部屋の前で待っていても、ピアノの音も話し声も一切聞こえてこない。
あの部屋とは大違いだ。
そういえばこの部屋のピアノ、すごく綺麗な音だったけ……。
あたしと小春ちゃんしか、あのピアノの音の良さに気付けていなかったみたいだけど。
「……」
高音も低音も澄みきった音を思い出すと、この部屋が最後の試験部屋に選ばれた理由が分かる気がした。
自作の曲を披露するのは、最高のピアノ。
舞台はもう、とっくに整えられているってことなんだ。
――ガラッ……
「……失礼します」
扉が開くと、出てきた女の子が振り返って室内に向かって一礼した。
それからすぐに再び扉が閉められて、中の様子も分からないうちに部屋と廊下が隔たれる。
部屋から出てきた女の子はあたしの姿には目もくれず、とぼとぼと頼りない足取りで歩いていった。
表情を確認する度胸はなかったけど、向けられた背中が寂しさを漂わせていたのは確かだ。
自信を失った姿を見てしまうと、こっちまで心が折れそう……。
……でも、もう後戻りなんて出来ないもんね。
あたしは荷物を持って閉じられた扉の前に立つと、心を決めてノックした。
――コンコンッ
「はい、どうぞ」
その声を合図に扉を開ける。
そして中で待ち構えている人たちに礼をしてから中に入った。