光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「どうぞ、そこに荷物を置いてください」
「はい」
部屋に入ると、すぐに荷物の置き場所を案内された。
指定された机の上に荷物を置き、ピアノの傍に寄って試験官の先生達と向き合う。
そしてまともに確認した先生達の顔を見て、やっぱりという思いが芽生えた。
試験官の先生の中には、よく見知った人がいたから……。
その人はあたしと目が合うと、微笑んでから口を開いた。
「こんにちは。私はこの学園で学園長を務めている東條と申します。君の受験番号と名前を教えてもらえるかな?」
学園長は笑顔のままだけど、極めて真面目な声でそう尋ねられた。
それがきっかけで、緩みかけていた気が引き締まる。
そっか……。
目の前にいるのはいくらお母さんの事情を知っている学園長だとしても、試験官の先生であることには変わらないんだ。
そのことを、学園長の声が気付かせてくれた。
真っ直ぐ向けられた視線に応えるように学園長の目を見る。
「はい。受験番号630番の麻木佐奈と申します。よろしくお願いします!」
腰をきちんと折り曲げて礼をする。
そして頭を下げたときと同じリズムで顔を上げると、満足そうに学園長が笑っていた。
「さっそく演奏を始めてもらいたいところだが、その前にまず質問をさせて欲しい」
えっ……。
すぐに実技に入るのだと思っていたから、そう言われて少し戸惑う。
でも断る権利なんて持っていないから、立ったまま学園長の言葉を待った。
学園長の両サイドに座っている他の先生達は、その間に何かを資料に書き込んで準備をしている。