光を背負う、僕ら。―第2楽章―



学園長は一枚の紙を手に取り、そして言った。




「麻木さん。今から演奏するこの曲に、どんな思いを込めましたか?それを教えて下さい」




学園長が手にしてこちらに向けた紙。

それは事前に提出しておいた自作の曲の楽譜だった。



その楽譜の一番上に書かれている曲のタイトルは『光の在り処』。



自分らしい曲を目指して何度も悩みながら生み出した曲に、あたしがつけたタイトルだ。



あの曲に込めた思いは正に、そのタイトルに関係している。



あたしは曲を作りながら頭に浮かべていたことを思い出しながら、慎重に言葉を繋いだ。




「その曲に込めた思いは“背中を押してくれる光”です。何かに立ち向かうとき、決して人は一人で頑張っているわけではありません。いつも背中の後ろの見えないところで励ましてくれる人や言葉、また事柄などがあります。そういったものは暗闇や迷いの中に人が陥ったとき、光となって進むべき道を照らしてくれます。私はそういった光がすぐそばにあることに気付きたい。そして支えてくれる光たちに感謝をしたい。そのような思いを込めました」




音符や旋律の一つ一つに込めた思いを言葉にして伝えるのは、なかなか難しいことだった。



でも、逆にそれぐらいで良い。



あたしが伝えたい思いはすべてあの曲に込めたのだから、あとは演奏を聞いてもらえば分かってもらえるはず……。



あたしはその意思を伝えるように、学園長の瞳をしっかりと見た。



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