光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「……そうですか、分かりました。では、演奏の準備を始めてください。麻木さんが思いを込めて作った曲、楽しみにしています」
あたしの思いが通じたのかは定かではないけれど、学園長はそう言って微笑んだ。
きっと他の受験生にも同じことを言っているだろうから、本当に楽しみになんかしていないかもしれない。
だけどあたしの曲から何かを感じ取ってもらえたら良いと、本気で思いながらピアノの準備をした。
だって今から弾く曲はそう思えるぐらい、あたしの大切なものを詰め込んだものになったから……。
「では、準備が出来たら演奏を始めてください」
ピアノとの距離を合わせ終えたあたしの様子を見て、試験官の先生の一人がそう声をかけてきた。
学園長は机の上で手を組み、じっとこちらを見据えて待っている。
その視線は鋭かったけど、怖じ気づくことはなかった。
身体も心も、とっくに準備は出来ている。
不思議と緊張感は身体から抜けてリラックス出来ているから、指が震えるなんてこともない。
心地よい空気があたしを纏っている気がした。
……これなら大丈夫だ。
あたしの曲を、万全の状態で奏でられる。
集中した状態に入って勇気が出てきたあたしは、力強い声で言った。
「準備が出来ました。よろしくお願いします」
椅子に座ったまま先生達の方を向いて礼をする。
そして真っ直ぐ、鍵盤を見つめた。
鍵盤に指を添えれば、神経が指先に集中して研ぎ澄まされていく。
小さく深呼吸をして、ゆっくりと指を動かした。