光を背負う、僕ら。―第2楽章―
ピアニストだったお母さんの影響で始めたピアノ。
でも、ピアノから遠ざけられてしまった理由もお母さんだった。
だからこそあたしは、甘えていたのかもしれない。
“お母さんはピアニストの笹川詩織”という事実を理由に始めたピアノだから、それを理由にピアノを弾けなくなってしまうのも仕方ない。
しょうがないことなんだって、自分に言い聞かせて。
ピアノを愛する自分の気持ちを押し殺して、ピアノが弾けない状況をすべてお母さんのせいにしていたのかもしれない。
だけど自分の進路に向き合ったとき、甘えている自分の弱さに気付けたんだ。
――ピアノを弾きたい。
そう伝えるチャンスはいくらでもあったのに、動こうとしていなかっただけ。
受験という分岐点に立ったとき、目指したい場所は一つだった。
ピアノを弾かなくなってからずっとゴールを見失ったと思っていたけど、本当は真っ暗な道の真ん中でもちゃんと爪先は行くべき場所に向けられていたんだ。
それは背中を押してくれる光に気付いて、あたしの気持ちに応えるように光が姿を現してくれたときに、やっと気付けたこと。
進む道が真っ暗だったのかな。
……ううん、きっと違う。
本来傍にあった光を見失っていただけだから、周りが黒く見えてしまっただけ。