光を背負う、僕ら。―第2楽章―



白く眩い光は時々姿を隠してしまったけれど、ちゃんと見付けることが出来た。



あたしはたくさんの光に背中を押してもらい、ときには誘導してもらいながら、やっとここまで自分の足で歩いてきたんだ。



だからもう、何も怖いものなんてない。




曲が終わる寸前、あたしの口角は自然な流れで上がっていた。



この瞬間をずっと待ち侘びていた心に比例して笑顔が溢れ出す。



――楽しい……!


ここまで来ると、あたしを支配する感情はもうそれだけ。



大好きなピアノを、大好きで大切な人達に応援されながら弾くことが出来る。



こんな状況が楽しくないはずがなかった。



だからこそ、あたしは最後まで弾む気持ちのまま丁寧に音を繋いだ。



こんなにも楽しみながらピアノを弾けるこの瞬間が、ずっと続いていけばいい。



そう、密かに願いながら……。





あたしの中に余韻を残したまま演奏が終わった。



鍵盤から指を離す瞬間はとても名残惜しかったけど、自然と笑顔が浮かんでいた。



身体を巡る爽快感は、まるで全速力で走りきったときの感覚に似ている。



……あぁ、そうか。

あたしは夢に向かう道を、やっとここまで走ってきたんだ。



光で明るくなった道を走ることが出来たから、きっとこんなにも清々しいんだね……。




あたしは気持ちが冷めないうちに静かに席から立ち、先生達に向かって礼をする。



最後に見た学園長は満足そうに笑っていたから、あたしも今はこれだけで満足だった。



.

< 429 / 485 >

この作品をシェア

pagetop