光を背負う、僕ら。―第2楽章―



そういえば鈴木先生には色々と助けてもらったし、夢を追い求めるきっかけをもらったっけ……。



音楽室で初めてみんなの前でピアノを披露したとき。

鈴木先生があたしの演奏を聞いていなかったら、東條学園への入試も薦めてもらえなかったかもしれない。



それに旧音楽室のピアノで練習をさせてくれたのも先生だった。



思い返せばたくさんの恩を受けてきたんだ。



あたし、たくさんの人にここまで導いてもらったんだね……。



そのことを理解していたつもりだけど、こうやって同じように喜んでくれる姿を見たら、ますます実感することが出来た。



胸の中にじわりじわりと温かい感情が芽生えて、頬はずっと緩みっぱなしだった。




「先生、本当にありがとうございます……!先生のおかげで無事に合格出来ました」




感謝って、どうやったら伝わるのだろう。


ありがとうって言葉を精一杯使うけれど、身体中に広がった幸せな気持ちはまだ全然伝わりきっていないような気がした。



鈴木先生は微笑んで、ゆるりと首を横に振る。




「いいえ、私は大したこと出来ていないわ。背中を押す手助けをしただけ。その手助けをちゃんと自分の力に出来るように頑張ったから、佐奈ちゃんは良い結果を出すことが出来たのよ。……本当に、おめでとう!」




あたしの目を真っ直ぐ見ながら先生はそう言ってくれた。



その優しさが嬉しくて何度もお礼を言った。

押してもらった背中を伸ばし、胸を張りながら。



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