光を背負う、僕ら。―第2楽章―
何故かその腕が震えているようにも感じられて、恐る恐る伸一の背中に自分の腕を回した。
安心させるように、守るように。
「……本当に、良かった」
「……」
「麻木なら大丈夫だって信じてたけど、おまえほんとすげーよ」
「佐藤君が応援してくれたおかげで、頑張れたんだよ?」
「ううん、違う。俺は全然、麻木の力になれてねぇよ……」
弱々しい声と共に、伸一の身体が離れていく。
申し訳なさそうに下がる表情を励ますように、そっと自分の手を伸一の手に重ねた。
自分から手を握るなんて大胆で恥ずかしかったけど、拒まれずに握り返されたから安心する。
「そんなことないよ。佐藤君は何度もあたしの力になってくれた。……佐藤君があたしのピアノを好きだって言ってくれたとき、すごく嬉しかったんだよ?」
二人で過ごした、短いけど濃密だった放課後の時間。
あのとき、伸一はあたしのピアノを好きだと言ってくれた。
麻木みたいに優しいピアノだと教えてくれたあの瞬間、どれだけ嬉しかっただろう。
「佐藤君がいるだけで良いの。あの日言ってくれた言葉があるだけで、あたしは何度だって頑張れたんだから」
伸一への恋心を抱いている限り、苦しい思いをして悩まされることもあった。
幸せな思い出はあの音楽室の中に閉じ込めて、綺麗な状態のまま置いていこうとしたことだってある。