光を背負う、僕ら。―第2楽章―
……でも、やっぱりそれは出来なかったんだよ。
置いてきたつもりだけど、何度だってあたしのもとへ帰ってくる。
それぐらい身体に染み付いた伸一の存在と言葉があったからこそ、あたしは逆に過酷な道を歩き続けることが出来たんだ。
伸一と想いが重なるまでの日々も、今日までの日々も……。
「そんな言葉、覚えててくれたんだな……」
どうやらあたしが覚えていたことが意外だったようで、伸一の目が見開かれる。
「忘れるわけないよ。佐藤君がくれる言葉は、どれもあたしの宝物だもん」
些細なきっかけのものも、深い意味などなく何気なく言われたものでも。
伸一があたしに向けて言ってくれた言葉は全部、大切な宝物だよ。
あたしの背中を押してくれる、大事な光。
伸一の存在はあたしがずっと求めていた、強い輝きを放つ光だったんだよ……。
「おまえ……。よくそんな恥ずかしいこと言えるよな」
「だっ、だって……。本当のことだし……」
あたしの言葉に伸一は顔を赤らめて、マフラーの中に頬を隠してしまう。
その様子を見ていると伝染してしまったらしく、さっきまで平然と言えていた言葉が急に恥ずかしさを帯びてきた。
緊張を誤魔化すように、二人で顔を見合わせて下手くそな笑みを浮かべる。
胸はくすぐったいけど、何だか幸せだ。
幸せすぎて、また別の涙が出そうなくらい。