光を背負う、僕ら。―第2楽章―
重ねた手はそのままにして、暗くなり始めた道を歩いた。
少しだけ歩みが遅いのは、お互いが少しでも二人の時間を長く過ごしたかったから。
寒さも繋いでいる手のぬくもりがあれば、全然苦にならなかった。
歩いている途中、気になっていたことをふと尋ねる。
「佐藤君の合格発表はいつだっけ?」
「確か……卒業式の前日だった」
「そっか……。前日なんだね」
今日から数えると、卒業式まで約2週間。
伸一の結果が分かるまでの時間もそれと同じだと考えると、短いようで結構長い時間に思えた。
きっとそれは、伸一自身が一番感じているだろう。
あたしも結果が分かるまで、とても長く感じられたから……。
「あのさ、麻木。一つ、わがまま言っていいか?」
伸一の口からポツリと言葉が漏れる。
顔を見上げると、緊張した横顔がアスファルトの地面を見ていた。
おもむろに、繋いでいる手を胸の高さに上げられる。
「……俺、麻木のピアノが聴きたい。この手が音を奏でる瞬間を、出来ればあの部屋でもう一度見たいんだ」
伸一の視線があたしの指先から徐々に上へと上がっていく。
最終的にはあたしの瞳に定まる視線がとても熱くて、鼓動がうるさいくらい鳴り始めた。
「あの部屋って……旧音楽室のこと?」
「ああ。あの場所で、もう一度だけ麻木のピアノを聞きたいんだ。出来たら、卒業式の当日に。それで、あそこで伝えたいんだ。入試結果と……俺の気持ちも」
伸一と触れ合っている指先が熱を帯びていく。
真っ直ぐな視線にとても緊張した。