光を背負う、僕ら。―第2楽章―
旅立ちの合図は光の音色
早朝の校舎内は、とても静かだ。
特に今日みたいな卒業式の準備で部活の朝練が休止されている日は、人の出入りが限られている。
だから、とにかくしーんとしていた。
校舎の外は少しだけ騒がしいと思って旧音楽室前の廊下から外の様子を覗けば、下級生が慌ただしい様子で体育館に向かっていった。
どうやら式場となる体育館の最終調整に追われているらしい。
何だか懐かしいな。
あたしも去年までは吹奏楽部として卒業式に参加したから、準備で忙しかったことをよく覚えてる。
……でも、ついに今年は違うんだ。
見送る側から、見送られる側へ。
その変化を胸の中でじっくり感じ取ると、切なさが溢れてきた。
何だか今日は、たくさん泣いてしまいそうだ。
あたしはスカートのポケットから重たい鍵を取り出すと、久しぶりに目にした旧音楽室の扉を開けた。
カチャリと響く解錠の音が胸を高鳴らせる。
まるで長い間止まっていた時間が、やっと動き出すみたいな感覚だった。
伸一との約束を果たすために借りた、この部屋の鍵。
鈴木先生に頼んだら、快く貸してくれたんだ。
卒業前に最後にここのピアノを弾きたいという気持ちを、どうやら汲み取ってくれたらしい。
最初にこの部屋を使えるようにしてくれたのも、鈴木先生だった。
本当に鈴木先生には、感謝してもしきれない。