光を背負う、僕ら。―第2楽章―
数ヶ月ぶりに開く扉は重かったけど、奥に広がる室内は少し清々しい空気だった。
「あれ……?」
埃臭いに違いないと思い込んでいたから、予想外の空気に驚く。
いくら最後にこの部屋を掃除したとはいえ、こんなにも綺麗な空気なわけないと思うんだけどなぁ……。
ピアノと、その周りに積まれている机や荷物の数々。
それらをぐるりと見渡すと、明らかに埃や塵が拭き取られていた。
もしかして、鈴木先生が掃除してくれたのかも……。
先生ならあり得そうなことで、わざわざ掃除してくれたなんて考えると申し訳ない気持ちになった。
でもやっぱり、それ以上に感謝の気持ちが大きくなる。
あたし、てっきり自分は好きなピアノも弾けなくて恵まれていない状況だと思っていたけど、どうやらそれは違ったらしい。
この部屋を貸してくれる先生がいた時点で、十分恵まれた環境の中にいたんだね。
おまけに今日まで貸してくれた上に、掃除までしてくれたんだもん。
あとでお礼を言おう。
たくさんの感謝を伝えるために――。
「……おはよう、麻木」
「あっ、佐藤君おはよう」
ちょうどピアノが演奏出来るように準備をし終えたところで、伸一が部屋に入ってきた。
どうやら伸一との待ち合わせ時間になっていたらしい。
伸一は懐かしそうに目を細めて室内を見渡しながら、ピアノの傍に歩み寄ってくる。