光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「……」
「……」
本当はお互いに、話すべきことや言うべきことがあることは、十分分かっている。
それでも上手く会話が続かなくて、あたしも伸一も黙り込んでしまった。
沈黙にならないのは、あたしが気を紛らわすために鍵盤を叩いているから。
……ポーン、と。
不規則に弾け出す音が、その場を繋いでくれている。
鍵盤の一番右に指が触れたとき、伸一が息を吸うのが分かった。
それが合図だと分かり、音を止めて伸一に向き合う。
落ち着いた笑顔が向けられていた。
「俺、合格した」
「……!」
伸一の口元がゆるやかに横いっぱいに伸びる。
――合格。
それはもちろん、昨日発表された伸一の入試結果のことだった。
「ちゃんと、行きたかった西澤高校に受かってたんだ!」
「おっ、おめでとう!!受かって良かったね!本当に、良かった……!」
嬉しさで言葉が途切れ途切れになる。
伸一が、夢に繋がる道を一歩進んだ。
そう考えるだけで胸がいっぱいになる。
結果を教えてもらうためにここで待ち合わせていたわけだけど、実際に良い結果を教えてもらえるのは嬉しかった。
しかも直接伸一にお祝いの言葉を言えることが、さらに幸せでもある。
あたしの合格結果を伝えた日の伸一も、こんな気持ちだったのかな。
興奮気味のあたしを見て、伸一は楽しそうに話してくれた。