光を背負う、僕ら。―第2楽章―



「……」


「……」




本当はお互いに、話すべきことや言うべきことがあることは、十分分かっている。



それでも上手く会話が続かなくて、あたしも伸一も黙り込んでしまった。



沈黙にならないのは、あたしが気を紛らわすために鍵盤を叩いているから。



……ポーン、と。


不規則に弾け出す音が、その場を繋いでくれている。



鍵盤の一番右に指が触れたとき、伸一が息を吸うのが分かった。



それが合図だと分かり、音を止めて伸一に向き合う。



落ち着いた笑顔が向けられていた。




「俺、合格した」


「……!」




伸一の口元がゆるやかに横いっぱいに伸びる。



――合格。


それはもちろん、昨日発表された伸一の入試結果のことだった。




「ちゃんと、行きたかった西澤高校に受かってたんだ!」


「おっ、おめでとう!!受かって良かったね!本当に、良かった……!」




嬉しさで言葉が途切れ途切れになる。



伸一が、夢に繋がる道を一歩進んだ。


そう考えるだけで胸がいっぱいになる。



結果を教えてもらうためにここで待ち合わせていたわけだけど、実際に良い結果を教えてもらえるのは嬉しかった。



しかも直接伸一にお祝いの言葉を言えることが、さらに幸せでもある。



あたしの合格結果を伝えた日の伸一も、こんな気持ちだったのかな。



興奮気味のあたしを見て、伸一は楽しそうに話してくれた。



< 453 / 485 >

この作品をシェア

pagetop