光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「正直言うとさ、試験はどれも手応えがなくてダメかと思ってたんだ。でも結果は、無事に合格。自分でもすげー嬉しいし、ついてたんだなって気がする」
伸一の表情はとても穏やかで、安堵しているのがよく分かった。
「違うよ。佐藤君が頑張ったら受かったの。本当におめでとう!」
「ありがとう、麻木。……俺、頑張るよ。夢に向かって頑張る麻木に置いて行かれないように、ちゃんと勉強と部活を両立していく。だから――」
そこまで言ったのに、伸一はピタリと言葉を止めてしまった。
喉につっかえた言葉に、ただ唇を噛み締めるだけ。
伸一は緊張した様子で表情を硬くして、苦しそうに目を細める。
それだけで、何を言おうとして留まったのかが分かった。
もう一つ、今日伝えようと約束していたこと。
お互いの気持ちを曝け出すべき瞬間は、もうすぐそこまで迫っているってことだった。
……でも、緊張が伸一の言葉を邪魔している。
それはあたしも同じで、さっきから心臓が自分のものとは思えないほど違和感のある動きをしていた。
だけど、あたしの覚悟は決まっている。
だからこそあたしは、椅子に座りながら心を落ち着かせた。
そして身体はピアノと向き合い、顔だけを伸一に向けて無理矢理にでも笑って、震える喉で声を絞り出した。
「……ねぇ、佐藤君。あたし、佐藤君への今の気持ちを込めて曲と歌を作ったの。それを弾いても良いかな?」
伸一の気持ちを聞く前に、まずはあたしから伝えたい。
あたしから始めた、この長い片思いの結末。
そこに先に踏み出すのは、やっぱりあたしでありたかった。
たくさんの人を巻き込んだ恋へのけじめも兼ねて……。