光を背負う、僕ら。―第2楽章―
伸一が少し驚いた様子でこっちを見ている。
きっと、あたしから言い出すとは思っていなかったのだろう。
おまけに気持ちを伝える手段として、曲だけでなく歌まで用意していたことが意外だったのだと思う。
あたしだって最後までどうしようかと悩んだ。
曲だけの方が良いのかもしれない。
でも、詩もつけた方が気持ちが伝わりやすいかも……。
そうやって考え抜いた結果、あたしは両方を披露すると決めたんだ。
前に告白したのは歌いながら演奏したあとだったから、今回も同じ方が良いと思って……。
でも、そんなの伸一には迷惑だったのかな?
重いって思われた?
そんな一抹の不安を抱えて伸一を見ると、すぐに笑みを浮かべてくれた。
それだけで、あたしの緊張が解かされていく。
「もちろん、良いに決まってる。また麻木の曲と歌を聞けるならむしろ大歓迎だ。しかも俺への気持ちを込めてくれたなんて、すげー嬉しいよ」
柔らかい微笑みを見せてくれる伸一は、もう緊張していないみたいだった。
リラックスした状態で気持ちを聞いてもらえるならそれで良い。
あたしから気持ちを伝えるようにしたのは、ある意味正解だったらしい。
「ありがとう!じゃあ……弾かせてもらうね?」
伸一が頷くのを確認して、あたしはピアノに向き合った。
頭の中に浮かぶのは、伸一と一緒に帰った日に作ったメロディーと詩。
伸一への気持ちを何か形にして伝えたくて、作り出したもの。
どうかこの曲と歌で、あたしの今の気持ちが伸一に伝わりますように……。
そう密かに願いながら、あたしはゆっくりと鍵盤の上で指を踊らせ始めた。