光を背負う、僕ら。―第2楽章―
伸一への長い片思いはつらい経験の方が多かった気もするけど、辿り着いた気持ちはただ一つだったんだよ。
――伸一を、好きになって良かった。
引き離そうとしても離れてくれない恋心が行き着いたのは、後悔ではなく感謝の気持ちだったの。
――♪♪~~♪~♪♪~♪……
胸を焦がす切なさに少しの息苦しさを感じながらも、曲が終わる瞬間までしっかりと指を動かした。
伸一はこの曲と歌を聞いて、何を感じ取ってくれただろう。
そんなことを考えながら音の余韻を楽しんでいると、とてもドキドキした。
ゆっくりと鍵盤から指先を離す。
そして椅子から立ち上がって、伸一の方へと一歩進む。
伸一も机から離れてあたしに歩み寄ってきた。
二人の距離が、ぐっと近くなる。
この身体の距離が心の距離を示していれば良いと思った。
耳に響く心音に緊張しながらも、伸一の顔を見上げる。
伸一も同じように緊張しているみたいで、固い表情になっていた。
「あっ、あの、最後まで曲を聞いてくれてありがとう。これが、今のあたしの気持ちです」
そこまで言って、一息つく。
深くゆっくりと呼吸をしてから、伸一の瞳を見た。
柔らかな弧を描く瞳に、あたしははっきりと告げた。
曲や詩ではなく、ちゃんとあたしの言葉で言いたかったことを……。