光を背負う、僕ら。―第2楽章―



制服の胸元にはバラのコサージュ。


手に持っているのは、受け取ったばかりの卒業証書を入れた筒。



そういう“卒業”のとき特有のものは目の前にあるのに、やっぱり実感がない。



今日でこの学校に来るのが最後だなんて……。



名残惜しい気持ちを胸に落としながら、明日美と流歌と一緒に昇降口を出た。



昇降口と校門の間にあるグラウンドには、あたし達と同じ卒業生がたくさん留まっている。



部活の後輩達も、先輩の門出を祝うために集まっているみたいだ。



みんながここで、時間が許す限り別れを惜しんでいた。




「先輩!ご卒業おめでとうございます!」




人の多さに圧倒されていると、吹奏楽部の後輩が駆け寄ってきた。



あたしと同じフルートのパート担当の子達に、あっという間に囲まれる。



明日美と流歌も、それぞれの後輩達に出迎えられていた。




「麻木先輩、ご卒業おめでとうございます!これ、私達からの気持ちです。今まであたし達を引っ張ってくださり、本当にありがとうございました!」




二年生の女の子が代表して、花束と色紙を渡してくれた。



この子はあたしが引退したあとに、フルートのパートリーダーを引き継いだと聞いている。



他の二年生や一年生を引き連れる姿はもうすっかり板についていて、何だか安心した。



あたしが引退して受験に立ち向かう中で、後輩達もしっかりと前へ歩いていたんだね。



成長したみんなの笑顔に、急激に寂しさを覚える。



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