光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「……ありがとう。小春ちゃんがいたから、伸一とも素直に向き合えたんだよ」
「お礼なんて良いのにー。あたし、特に何もしてないよ。むしろ色々と、手間かけちゃったっていうか……」
「ううん。それを言うなら、むしろあたしの方が小春ちゃんに悪いことしちゃってるし……」
「いやいや、あたしの方が……って!これ以上言い合うときりがないからやめよう!ねっ?」
小春ちゃんは堂々巡りになりそうな会話に、自ら区切りをつけて笑った。
必死になってあたしに言い聞かせる小春ちゃんの姿に、あたしも自然と笑っていた。
「うん、そうだね。きりがないもんね」
「そうそう。……っていうか、佐奈ちゃん。伸一と付き合うなら、覚悟しておいた方が良いよ?」
「えっ?覚悟って……何の?」
「伸一の性格だよ。あいつね、結構自己中なの。だからよくわがまま言われると思うから、ある程度覚悟しておいた方が良いと思う。あたしもよく、わがままに付き合わされて……」
「誰がわがままだって?」
「あっ……」
ふと人混みに紛れて現れたのは、話題の種となっていた伸一だった。
小春ちゃんの後ろに姿が見えて知らせようとしたときにはもう遅く、不機嫌な笑顔を浮かべた伸一は小春ちゃんの肩に手を置いていたんだ。
そして伸一の隣には、真藤君も一緒に立っている。
小春ちゃんの言葉を聞いていたみたいで、笑いを堪えていた。