光を背負う、僕ら。―第2楽章―




「あっ、そうそう。佐奈ちゃん、東條学園に行ってもよろしくね!あたしのピアノを一番分かってくれるライバルは佐奈ちゃんだけだから!」


「あっ、あたしこそ!これからもよろしくね。あたしのライバルも小春ちゃんだけだよ!」




これからそうなっていきたいという期待を込めて言ったら、小春ちゃんは笑って頷いてくれた。




……あたし達はまだ、ピアニストの卵にさえなれていない、駆け出したばかりの未熟な立場かもしれない。



だけど……いつか。


あたしのお母さんと小春ちゃんのお母さんみたいな関係みたいになれたら良いね。



注目されるぐらいピアノを愛したピアニストに。


そして、お互いを高め合えるような良いライバル関係のピアニストに……。




小春ちゃんは別れを告げると、人混みに紛れながら離れていった。



この中学校で会うのは最後だと思うと名残惜しいけど仕方ない。



でも小春ちゃんはこれから同じ学園に通うって考えたら、背中を見送ることも清々しい気持ちで出来たんだ。



小春ちゃんの姿が完全に見えなくなったところで、真藤君は深く息を吐いてから口を開いた。




「……さーて、俺もそろそろ帰るとするか」


「おいおい!またそのパターンで消える気かよ。そうはさせねぇからな!」




伸一はそそくさと歩き出そうとする真藤君を、ブレザーの襟を後ろから掴むことで引き止めた。



こんなにも素早く反応出来たのは、前にも同じような手を真藤君に使われていたからだろう。



真藤君、初詣での日もさっさと去って、あたしと伸一を二人きりにしたもんね。



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