光を背負う、僕ら。―第2楽章―
うんざりした様子でいる伸一に対して、真藤君はため息をつきながら振り返る。
どうやら掴まれた襟元が苦しかったらしく、伸一の手をはねのけていた。
「何だよ。俺もう、帰っても良いんじゃないか?」
「いやいや、帰ってもいいけどさ。その前に、佐奈にあの話聞かせてやれって」
あの話……?
何のことか分からなくて、首を傾げながら真藤君の顔を見る。
すると真藤君は嫌だと言わんばかりに眉をひそめた。
隣に立つ伸一は打って変わって楽しそうな表情だ。
「……嫌だ。別にわざわざ話すことでもねーし」
「えー、せっかくなんだから話してやれよ。……つーか、達也が言わないなら俺が言う!」
「はぁ!?」
焦っている真藤君に伸一はお構い無し。
何故か伸一はご機嫌な表情で真藤君の肩に手を回すと、自慢気に話し始めた。
「達也ってばすげーんだぜ!あの蓮波高校に合格してんの!しかも首位合格だったんだってよ!」
「えっ、そうだったんだ!すごいね!!真藤君おめでとう!」
まさか真藤君が受験した学校が、蓮波高校だったなんて……。
真藤君から製薬関係の仕事に就きたいという夢を聞いたことはあったけど、志望校のことは聞いたことがなかった。
だから今まで、どこを志望しているのか分からず仕舞いだったんだ。
それがまさか偏差値が一番高い学校に合格……しかも、首位で合格していたなんて。
お祝いの気持ちより、驚く気持ちの方が大きかった。