光を背負う、僕ら。―第2楽章―
真藤君があたし達のもとから去った頃には、周りの人だかりがだいぶ小さくなっていた。
名残惜しい気持ちを背負いながらも、徐々にみんな、最後の帰路に踏み出している。
あたし達もそろそろ、一歩進まなければいけないみたいだ。
「あたしも……そろそろ行くね。明日美と流歌が待ってるから」
校門前にいる二人の姿に視線を向けて、別れのきっかけを呟いた。
今日は二人と一緒に帰ると約束していたから、伸一と一緒にいられるのはここまでだ。
小春ちゃんと話している頃からずっと待たせてしまっているから、さすがにこれ以上待たせているわけにはいかない。
明日美と流歌のことだから「佐藤君ともう少し話してて良いよ」って言ってくれそうな気もするけど、そこまで甘えることは出来なかった。
だって、伸一とはこれから別々の学校で過ごすことになる。
そんな日々を目の前にしていつまでも離れられずにいるのは、ダメな気がするんだ。
今までより会えない時間が長く続く分、別れの瞬間に寂しくならないように慣れておかなくちゃね……。
伸一が口を開くまでの間にも、少しずつ人が帰っていった。
「……そうだな。そろそろ帰らなくちゃな」
しんみりとした伸一の声で紡がれる言葉は、伸一自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
あたしもその言葉を自分の中で復唱して、離れがたい気持ちを押し殺す。
溢れ出しそうになるものを堪えて息を吸い込めば、春の空気の匂いがした。
それが少しだけ、未来へ歩く勇気をくれる。