光を背負う、僕ら。―第2楽章―



「今日はありがとう。伸一の気持ちを聞けて嬉しかった」


「俺こそ、ピアノまで聞かせてもらって嬉しかった。ありがとな」




目を合わせれば、お互い自然に笑顔になった。



今日は片思いが終わって、新たな二人の恋が始まった日。


そんな最初の始まりの日の別れ際を、ちゃんと笑顔で迎えることが出来た。



それだけで、これからも胸を張って歩いていけるよ。


きっと――……。




伸一と向き合ったまま、一歩ずつ少しだけ後退した。



あたしの背中を受け止めてくれる親友との距離が縮まる。




「……じゃあ、バイバイ。また今度ね」


「ああ、またな」




短く手を振れば、伸一も手を挙げて応えてくれた。



今日の日の伸一の笑顔を刻むようにじっと見つめたあと、くるりと背を向ける。



振り返れば、きっと寂しさが募るだろう。


だからあたしはそのまま、振り返らずに歩いた。



大好きな人に見守られて照らされた道を、しっかりとした足取りで……。




「佐奈、もう帰って良かったの?せっかくだから佐藤君ともう少し話してて良かったのに」




伸一とのやりとりを見ていたらしい二人が笑顔で迎え入れてくれたと思ったら、すぐさまこんなことを言ってきた。



「本当に良いの?」と再確認する流歌の隣で、明日美はあたしの後方に見えていると思われる伸一の様子を確認している。



そんな二人の姿に、ついついクスッと小さく笑ってしまった。



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