光を背負う、僕ら。―第2楽章―



どうもその参加したコンクールが大人も参加する有名なものだったみたいで、たった15歳で優勝した小春ちゃんはマスコミから注目されていた。



そして取材を受けている際に『戸沢香澄』さんの娘であることが発覚して以来、マスコミから更に注目されるようになった。



きっと今世間で、小春ちゃんのことを知らない人はいない。



小春ちゃんは“天才ピアニスト”として、話題の人となっていたんだ。




「“天才ピアニスト”か…。
小春ちゃんも偉く有名になったもんだね~」



明日美もテレビで聞いたであろう言葉をしみじみと言うけれど、なんだかそれが噂好きのおばちゃんみたいで笑えた。



けど明日美の声は笑っていなくて、いたって真面目なものになる。



「あたしは佐奈の方が“天才ピアニスト”だと思うけどな」


「――……」



あたしの顔から、笑顔が引っ込んだ。



明日美は時々、こうやって何気なくあたしの奥に秘めているものに語りかけてくる。



それが意識しているのか無意識なのかは、分からないことだけど。



「…ありがと。そう言ってもらえるのは嬉しいよ。
……でも、あたしはまだまだ小春ちゃんには敵わないから」



言ったことに、間違いなんかはない。



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