光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「あっ…えっと、わりぃ!
盗み聞きしてたとかじゃなくて…。その、聞くつもりはなかったんだけど、自然と聞こえてきたんだ。
……それでつい、歌が聞こえてきた方に来てたっていうか…」
背後であたふたと困り果てながら弁解しようとしている伸一の姿が容易に思い浮かぶ。
決して悪いことをしているわけでもないのに必死になっている伸一には、かなり申し訳ないと思う。
だけど伸一を想って書いた詩や曲、ましてや自分の歌声まで聞かれてしまったことがこの上なく恥ずかしくて、すぐに振り返ることは出来なかった。
「わっ、分かってるよ…。盗み聞きじゃないことぐらい」
首を振ってそう言うことが、今出来る最大限のことだった。
「…そっか。分かってくれてありがと」
「う…うん」
二人ともそう言ったきり黙ってしまい、一人でいたときに感じた静寂とは違ったものが訪れる。
……気まずいよ、この空気。
あたしは出来ることなら早く、伸一にどこかに行ってほしいと思っていた。
だってこれ以上一緒にいると違う意味で心臓が持ちそうにない。
うるさく鳴り続ける原因を、セーターの上から握り締めた。