光を背負う、僕ら。―第2楽章―
背中合わせのふたり
窓を微かに開ければ、室内の埃は一気に広い外に飛び出していく。
澄んだ青色の空に旅立つそれを見つめながら、あたしは変な緊張感のせいで落ち着くことが出来ずにいた。
多分……いや、きっと。
原因は一つに決まっている。
――ガラガラッ…
「よぉ!もう練習始めてる?」
換気を終えて窓を閉めるのと同時に部屋の扉が派手な音を立てて開き、そこからあたしの心を鷲掴みにして離してくれない人が入ってきた。
「本当に来たんだ……佐藤君」
この人はどこまでも、あたしを掻き乱す人だ。
「だって昨日、約束したじゃん!秘密を守る代わりに、麻木のピアノを聞かせてもらうって」
「………」
まるで幼い子供みたいな無邪気な笑顔ではしゃぐ伸一に、あたしは何も言えなくなる。
その笑顔、絶対反則だよ…!
あたしは火照り始めた顔を隠すのが、精一杯だった。
……伸一があたしの歌声を聞きつけてこの部屋に来たのは、まだ昨日のこと。
伸一に何故この部屋でピアノを弾いていたのかと聞かれたあたしは、一か八かですべてのいきさつを話すことを決めた。
ピアノの練習は出来るだけ短時間で集中的に行いたくて、他人に邪魔されないためにもこの部屋で練習していることは明日美と流歌にしか教えていない。
だけどこうなってしまった今は、理由を包み隠さず話すしかなかった。