光を背負う、僕ら。―第2楽章―
……それに。
それに、伸一だったから。
この場所での練習を知られてしまった相手が伸一だったから、まだ話そうって思えたのかもしれない。
あたしの夢のことだって、全部教えてしまって構わない。
そこまで思えてしまうほどに惚れ込んでいるなんてきっと……いや多分、重症に違いない。
「俺、ここで聞いてるわ。ぜってぇ邪魔なんかしない。そう約束したもんな」
ピアノの傍にあった机の表面の埃を手で払いのけて、そこに伸一は腰掛ける。
どこか期待を込めているような視線を、準備を進める背中でひしひしと感じた。
……伸一にはすべてを話したあと、このことは誰にも言わず秘密にしてほしいと伝えた。
だけど伸一はそれを快く受け入れてくれたあとで、ある条件をつけてきた。
『じゃあ、秘密にする代わりに俺の頼みも一つ聞いて?
絶対練習の邪魔はしないから、もっと麻木のピアノを聞かせてよ。
――約束な!』
……なんだろうな。
とても伸一のペースに流されている気がする。
昨日の約束通りピアノの練習を聞きにきた伸一を突き返す勇気なんて、あたしにはこれっぽっちもない。
……思う壺っていう言葉は、こういう場合に使われるのかな。