光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「…じゃあ、始めるね?」
「おぅ!」
だけど、彼なら信じられるから大丈夫。
伸一なら約束を守ってくれると信じることが出来るから、あたしはあなたをこの場所に受け入れたの。
◇◆◇◆◇
「俺、ピアノのこととかよくわかんないけどさ。麻木のピアノは、すげぇ上手いと思う!
お世話とかじゃなくてマジで!」
放課後の数時間。
いつもとは違った空間の中でする練習はやけに緊張して、ミスも多かった気がする。
だけど今日の練習を終えたあとにご丁寧に感想を言ってくれる伸一は、こっちが恥ずかしくなるほど真面目に褒めてくれた。
「……いや、そんな褒めてもらえるようなものじゃないよ。今日はミスも目立ったほうだし」
「そうかー?ミスなんて、全然気にならなかったけどな」
……目が合わせられない。
きっと笑って褒めてくれているんだろうけど、それをまともに見ることは出来ない。
二人きりは苦手だと、改めて感じる。
手がすべって、鍵盤の蓋がガタンと音を立てて閉まった。