光を背負う、僕ら。―第2楽章―



「……なんか、音楽ってさ。
すげー人の心が表れるよな」




突拍子もない言葉に驚いて顔を上げると、久しぶりにまともに伸一と目が合った。



気付いていなかったけど伸一はずっとあたしを見つめていて。



絡み合った目線は、とても優しいものだった。




「なんか、麻木の演奏聞いてたらそう思った。
麻木の演奏は、優しいから」


「そう…かな」




遠回しに、あたしのことを優しいと言ってくれる。



伸一にとってそこに特別な感情がなかったとしても、自惚れたくなる。



あたしのことをそう思ってくれていると知れただけで、舞い上がりたくなるほどに嬉しかった。



接点などない彼の気持ちは、滅多に知ることが出来ないほどに貴重なものだから…。




彼の一言で一喜一憂しているあたしの気持ちなど知らない伸一は、また何気なくあたしが喜ぶ言葉をさらりと言ってみせる。




「俺、おまえのピアノ好きだけどな。
優しくて、まるで宝物みたいに大切そうに弾くところ」





――ねぇ、どうして。



どうしてあなたはこんなにも、あたしの心を揺さぶるの。



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