光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「…あり…がと」
ギクシャクした言葉があたしの緊張を伸一に伝えてしまいそうで、少し不安になる。
褒められたときの対応を、あたしはきっと知らない。
――キーンコーンカーンコーン…
この瞬間を待ち侘びていたように、チャイムがけたたましく鳴って終わりの時刻を知らせる。
「…っと、そろそろ帰る時間か」
古びた時計を確認して、伸一はもたれていた机からそっと離れた。
――夢の時間はきっと、シンデレラよりも短い。
「あたしは片付けてから帰るから、佐藤君は先に帰ってて大丈夫だよ。戸締まりもしなくちゃいけないし」
ゆっくりと思考が冷静さを取り戻すなかで、楽譜や問題集をカバンにしまっていく。
「…そっか。じゃあ、先に帰らせてもらおうかな」
気を遣ったあたしの気持ちを悟ったのかして、伸一は遠慮がちにカバンを持つ。
確かこんな会話を、前にもしたんだっけ。
些細なできごとでも、伸一と関わったことならいくらでも覚えてる。
忘れられないぐらい、あなたにぞっこんなんだよ。