光を背負う、僕ら。―第2楽章―
伸一が部屋を出ていくのを横目で見ながら、あたしもカバンと鍵を持って出口に向かう。
すると先に行ったはずの伸一が廊下の壁にもたれて、あたしが出てくるのを待っていた。
「………」
「麻木にばっか戸締まり任せるのは悪いからさ、俺も一緒に鍵返しにいくよ」
まだ何も言っていないというのに、伸一は照れたように笑ってそう言う。
――『麻木が鍵返しに行ってくれるのに、俺が何もしないのは悪いだろ?だからせめて、鍵ぐらい閉めるのは手伝おうと思って』
……ほらね。
あなたはまたあのときと同じように、気を遣ってそう言うの。
「……ありがとう」
「ん」
あたしが持っていた鍵を奪って扉に鍵をかける伸一は、お礼の言葉を照れくさそうに受け取った。
……伸一。
あなたは多分、勘違いしてる。
優しいのはあたしじゃなくて、きっとあなただよ。
それも、とっても不器用な優しさ。
一人で返却しに行こうと思っていた鍵は、結局伸一と返しに行った。