光を背負う、僕ら。―第2楽章―
◇◆◇◆◇
次の日。
向かうのは、相変わらず埃で充満している旧音楽室。
扉を開けた途端に体を包み込むカビ臭い匂いには未だに慣れることはない。
「………」
昨日この場所に伸一がいたなんて、なんだか少し信じられない。
だけど荷物の配置も匂いも以前と変わりがないというのに、記憶の中にはしっかりと残像だけが残っている。
だからあの夢のような時間は幻なんかではなくて、現実にあったものなんだと実感出来た。
あたしはピアノの足元にカバンを置く。
そして作曲の参考になりそうな文献書を取り出した。
……そのときだった。
――ガラガラッ!
まるで昨日のシーンを再生しているみたいに、扉が音を立てて開く。
「あっ、まだ始めてねぇみたいだな」
「……え」
ど…どうして。
……伸一がここにいるの?
たくさんの荷物の山の間をすり抜けて部屋に入ってきたのは、昨日も同じようにやって来た伸一だった。
伸一は急いで走ってきたのかして、息が少し上がっている。
でもあたしと目が合うと額にうっすらと浮かんだ汗を手の甲で拭い、八重歯を見せて爽やかに笑ってみせた。